医院開業と診療報酬について構造と改定による影響

2022.2.1

医院開業を行えば必ず使うのは診療報酬です。

診療報酬によって、どんな診察を行えばいくらもらうのかなどが明確に定められています。

診療報酬の構造はどれくらい理解していますか?

また、数年後ごとに診療報酬は改定されていますが、どのような影響があるのでしょうか?

 

医院開業では医療の質なども大切ですが、その次に気を付けるべきは診療報酬です。

診療報酬とは各医療行為に対して公的な価格表であり、売上を決めるかなり重要なものです。

 

本記事では、医院開業における診療報酬点数の基本や、診療報酬点の構造と診療報酬の改定による影響などについて解説します。

ぜひ参考にしてください。

診療報酬点数表の構造とは

診療報酬点数表とは、診療報酬点数が記載されているかなり分厚い本です。

診療報酬点数表は複雑な加算要件などが記載されているため、かなり複雑で難解な本だと言われています。

 

また、そもそも診療報酬とは、保険医療機関や保険薬局が提供する保健医療サービスの対価として患者から受け取る報酬です。

点数は1点が10円として計算されます。

診療報酬点数表の構造は、「基本診療料」と「特掲診療料」から構成されており、この2つの合計です。

 

診療報酬点数表は、厚生労働大臣と中央社会保険医療協議会との議論を行い、決定したうえで改正されます。

そのため、点数表を理解してきたところで新しく改訂されてしまって、また新しく理解し直す必要があるのです。

 

診療報酬点数表の基本を押さえたうえで、以降では基本診療料と特掲診療料について詳しく解説します。

基本診察料

基本診察料とは、診療ごとや毎日換算できる来院するための基本料のようなものです。

基本診療料には以下のものが該当します。

 

  • 初診(1回目の診察の際に支払うものであり簡単な検査・処置などが含まれている場合もある)
  • 再診(2回目以降の診察の際に支払うものであり、簡単な検査・処置などが含まれる場合もある)
  • 診療時間内(営業時間内)
  • 診療時間外(あらかじめ公然と示された時間外である)
  • 年齢(6歳以上か6歳未満か)
  • 夜間早朝等加算

 

営業時間外には休日や深夜診療も含まれており、時間外・休日・深夜の順番で点数が高くなっていきます。

休日に該当するのは日曜日と祝日です。

 

ただし、例外として日曜日と祝日を診療日と公表している場合は、診療時間外には該当しません。

また、深夜に該当するのは夜22時〜朝6時ですが、診療時間内でも夕方18時〜朝8時であれば夜間早朝等加算が付きます。

特掲診療料

特掲診療料とは、特定の医療行為を施したときに発生する点数で、毎回医療行為を行った分だけ算定を行います。

特掲診療料は以下の12項目です。

  1. 放射線治療
  2. 麻酔
  3. 手術
  4. 処置
  5. 精神専門療法
  6. リハビリステーション
  7. 注射
  8. 投薬
  9. 画像診断
  10. 検査
  11. 在宅医療
  12. 医学管理等

 

特掲診療料の中でも、どのような治療をどの程度したのかによって点数は上下します。

診療報酬の改定による影響とその対応

医療は常に進化しており、毎年新しい医療が取り入れられているため診療報酬にも定期的な改定が必要となります。

現在は2年ごとに改定されており、新しい診察を取り入れるだけではなく報酬の価格なども変動しています。

 

最近大きく診療報酬が改定されたのは平成31年(2019年)です。

この報酬改定は、消費税増税が行われたためにイレギュラーな改定となっています。

 

このようなイレギュラーな事態にも対応するため、2年に1回の頻度ではなく臨時で診療報酬の改定が行われる場合もあります。

平成30年の改定に関しては診療行為そのものではなく、増税に対応するための改定でした。

 

そうなると気になるのは、増税によって医療費のどの部分に影響が出たのかではないでしょうか?

そもそも、基本的に患者に請求する医療費や診療報酬は消費税非課税となっています。

 

そのため、医療費に関しては増税が行われても金額は上がりません。

ただし、医療費自体は増税では上がらないものの、医療サービスを提供するための物品(消毒やガーゼなど)の業者から購入しているものには増税の影響が出ます。

 

もし、診療報酬の改定を行わなかった場合、医療費は増税の影響を受けませんが物品の値上がりは行われます。

このような背景から、医院側の利益減少を食い止めるため平成31年の診療報酬の改定が行われました。

 

先述したように、診療報酬の改定は基本的に2年に1回程度と定められています。

よって、今後求められる診療報酬の改定は、以下のような超高齢社会に対応した診療報酬改定です。

  • 医療と介護の連携の強化を推進する介護医療院の創設
  • かかりつけ医機能を担うための医療機関に対する厚い評価

 

今後高齢者がどんどん増えていくと予想される日本ですが、どうすればより高齢者を支える施策ができるか国は日々会議を重ねています。
つまり、高齢者が必要とする医療行為の充実化が今後予想されます。

 

診療報酬の改定は、医療に携わっている方にとっては運営にかかわるかなり重要な出来事です。

また、診療報酬の改定は患者が負担する金額も変わるので患者にとっても他人事ではありません。

そのため、患者さんに「どうして支払金額が変わったのか?」「前回と支払金額が違う」などの質問をされる可能性も考えられるでしょう。

 

変更された部分やもともとはどうなっていたのか、なぜ今回の支払い額は違うのかなどをしっかりと理解しておくことで、医療知識のない患者に分かりやすく説明できるようになります。

 

きちんとした説明を医師から丁寧に行うことで、患者さんも安心して医院に通えるようになります。

今後、リピーター患者の獲得や新規患者の獲得につながる可能性が高いです。

 

多くの患者に来院してもらえると医院の利益の安定性をはかれます。

患者の疑問や不安にも親身に寄り添うために何がどう変わったのか、しっかり説明できるとよりいいでしょう。

 

また詳しく診療報酬改訂で変わるかかりつけ医の重要性と求められる5つの機能こちらの記事で紹介していますので、さらに詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。

診療報酬改訂で変わるかかりつけ医の重要性と求められる5つの機能

各診療科別:診療報酬点の構造

それでは各診療別の診察報酬点の構造について詳しく紹介していきます。

ここでは、よく使われる以下の4つをピックアップしました。

  1. 外来報酬
  2. 在宅医療
  3. 医学管理・指導料
  4. 検査

 

点数自体は今後変更される可能性がありますが、構造自体は変わる可能性はほとんどないでしょう。

それぞれについて説明します。

外来診療

外来診療とは多くの病院で取り入れられているものであり、受付をしたあとに診察・検査などの処置を受けて、最後に会計を行う流れのものです。

多くは患者には自分で病院に来てもらい、入院を伴う治療は基本的に行いません。

 

ただ、大きい病院などの入院設備が整っているのであれば、夜間休日や救急搬送された患者、重症の患者の対応も行います。

外来診療の診療報酬点の構造は、以下が基本的な考え方になります。

  1. 初診か再診かどうか
  2. 6歳以上か6歳未満かどうか
  3. 通常診療時間か夜間・深夜・休日祝日かどうか

 

初診料や再診料の占める割合は医院の売上に大きく影響しますので、理解しておくと効率的な算定ができるでしょう。

外来診療では「待ち時間が長い」といった意見が多く出る可能性が予想されます。

そのため下記の導入を検討し、待ち時間の短縮などに努める病院が増えています。

  • 電子カルテの導入
  • オーダーリングシステム
  • 医事システム
  • 画像管理システム

 

また、オーダーリングシステムとは検体検査や生理検査、放射線などの処方や投薬などの各種オーダー情報を入力するものです。

そうすると、各部門に即座に伝達・病院業務の省力化を行い、サービス提供の短縮を目指すためのシステムになっています。

在宅医療

在宅医療とは者さんに医院に来てもらうのではなく、自宅や施設に医療関係者側が訪問して医療提供を行います。

在宅医療、とくに訪問に関しての診療報酬についてはかなり細かく細分化されています。

在宅医療の算定は、主に以下の4点が中心です。

  1. 計画的かどうか
  2. 月2回以上の訪問があるか
  3. ターミナルケアかどうか
  4. 特定施設かどうか

 

計画的ではない訪問は往診、計画的な訪問は在宅療養支援診療所が優遇されます。

ときには、高齢者施設など特定施設と定義されているところにも在宅医療が適用されています。

 

この特定施設は特定施設入居時等医学総合管理料の管理対象となる患者が多い場合が多いです。

特定施設入居時等医学総合管理料とは、施設入居患者に対して総合的な医療管理を評価する診療報酬を言います。

そのためより効率的な訪問診療を行えます。

医学管理・指導料

医学管理とは医学的処置や投薬などの技術料とは違い、医師から受ける患者指導や医学的管理を評価する診療報酬項目です。

 

とくに、新型コロナウイルスの影響で収益が減ってしまった、オンラインを使った新しい医療サービスの提供を始めたい方はぜひ導入を検討してください。

 

医学管理料や指導料は医院の収入の中でもかなり重要な収入源になります。

国も政策的に力を入れた特定の疾患には高額点数が付与されています。

 

その結果、医学管理を算定する件数が増えるとより高収益です。

医学管理料などの特徴として、検査数値による生活指導や療養指導が中心になります。

そのため多少手間はかかりますが、材料費などの費用がかかりません。

 

医学管理・指導料のポイントは生活習慣病管理料です。

脂質異常・高血圧・糖尿病等の病気の場合、月に1回算定が可能となっています。

 

それぞれの点数は以下の通りです。

  • 脂質異常症:650点
  • 高血圧症:700点
  • 糖尿病:800点

 

これからはかかりつけ医がかなり重要視されていくと予想されます。

かかりつけ医として地域住民の健康管理を担当するとなると病気の1次予防、2次予防を医者が担う必要があるでしょう。

 

医学管理料や指導料などは、患者に負担してもらう金額が高額になる場合が多いため、算定しない医院も多いです。

しかし、質の高い指導を継続して行っていくことや、患者さんからの信頼を獲得していくために、必要になるケースもあることを覚えておきましょう。

検査

検査は検体検査をより効率的に算定していく必要があります。

その中でも、生化学的検査(血液を遠心分離機にかけて調べる検査方法)には3つの包括があります。

  1. 5~7項目
  2. 8~9項目
  3. 10項目以上

 

10項目を大幅に越してしまいそうであれば検査項目を減らす努力が必須です。

ただ、検査を外部委託していると10項目以上は金額が変わらない契約が結ばれている場合があります。

 

そんなときは、検査項目を減らす努力はする必要がありません。

検査に必要な機器や薬品、消耗品の中には高価なものがあるので採算点に達しない件数しかない場合、購入は慎重に検討しましょう。

また詳しく診療報酬改訂で変わるかかりつけ医の重要性と求められる5つの機能こちらの記事で紹介していますので、さらに詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。

診療報酬改訂で変わるかかりつけ医の重要性と求められる5つの機能

診療報酬について常に最新の知識を

いかがでしたでしょうか。

医院開業において診療報酬とは経営で必ず必要となるものです。

診療によっていくらもらうのかなどが明確に決まっているため、その中でどのようにすれば経営を安定させつつ患者のためになるのかを検討する必要があります。

 

診療報酬は数年ごとに改定されていくため、まずは診療報酬点の構造を理解し、常に新しい知識を持って賢く医院経営を行いましょう。

 

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