医師の働き方「非常勤」とは

2022.2.1

近年、医師の働き方は多様化しています。

「常勤」だけではなく「非常勤」の選択肢もあり、さらに「非常勤」は「定期非常勤」と「スポット」と呼ばれるような不定期な働き方も選べるようになりました。

 

「非常勤」を選ぶ主な理由は、「常勤の仕事にプラスして収入を上げたい」「いろいろな現場を経験してスキルアップしたい」「小さな子どもがいるので週に3日短時間で働きたい」などが挙げられます。

 

非常勤ならこれらの希望を実現できるでしょう。
ただし、待遇面では常勤には劣る部分もあるので注意が必要です。

 

本記事では、「非常勤」と「常勤」の違いや、それぞれのメリット・デメリットなどを解説していきます。

非常勤と常勤の違い

「非常勤」と「常勤」にはどのような違いがあるのでしょうか。

まずそれぞれの言葉の定義から見ていきましょう。

言葉の定義

「常勤」とはフルタイム勤務とも呼ばれ、所定の労働時間を通しで勤務する労働形態です。

これに対し、所定の労働時間のうちの一部分だけを勤務する形態を「非常勤」(または短時間労働者、パートタイムなど)と言います。

 

一般的に、「常勤」は「1日8時間・週40時間」(フルタイム)、「非常勤」は「週に数日・短時間や異なる時間での不定期な勤務時間」(パートタイム)のことです。

一方、医療機関としてのそれぞれの定義は、以下のように1週間の労働時間が32時間以上かどうかが基準です。

 

厚生労働省医政局が平成26年4月に発行した「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」によると、「常勤」とは「原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者」となっています。

 

例えば勤務する病院で定められている勤務時間が、1週間のうち32時間未満だとしたら、32時間以上勤務している医師を「常勤医師」、勤務が32時間以下の医師は「非常勤医師」とみなされます。

ただ、これは厚生労働省に必要医師数を計上するために必要な区分であり、病院ごとに基準が異なっている場合があるので注意してください。

 

さらに、非常勤には「定期非常勤」と「スポット」と呼ばれる働き方があります。
「定期非常勤」とは名前通りある程度定期的な日程(決められた曜日・午前中、夜間などの決められた時間帯)で働く非常勤を指します。

 

「スポット」は、1日だけや単発の非常勤です。

例えば、健康診断やインフルエンザの予防接種・コロナウイルスのワクチン接種など、急速に医療ニーズが高まった場合に募集される場合が多いようです。

非常勤の勤務内容

非常勤の勤務内容は内科・外科・皮膚科などの診療科目にかかわらず、外来の求人が多い傾向です。

次に多いのは、当直や日当直で病棟を管理する業務で、救急対応をともなう場合もあります。

 

術後管理が必要となる外科などの執刀は、常勤医に限られるケースが多いですが、例えば眼科などでは、非常勤医が白内障や緑内障などの手術を行えます。

また、美容外科や美容皮膚科でも研修を行うなどの条件はあっても、執刀にかかわれる医療機関もあるようです。

 

「定期非常勤」の役割

  • 常勤医師が退職し、次の医師が見つかるまでの期間の人員
  • 常勤医師がさまざまな事情で休職する際に臨時勤務をしてほしい時

「定期非常勤」として居場所を確立できれば、常勤医師の業務を代替してくれる貴重な人材として頼りにされるでしょう。

勤務時間

非常勤で働く医師の勤務日数は、約40パーセントが「週1日程度」となっています。
勤務時間は「日勤1日」が50パーセント、午前のみ・午後のみ・当直のみはそれぞれ20~30パーセントほどです。
このように、非常勤は医師の希望によって多様な働き方ができるところが魅力の一つとなっています。

待遇面

自分の都合に合わせて働ける非常勤ですが、待遇面では常勤に劣るのは頭に入れておきましょう。

非常勤のみで働く場合には、健康保険や厚生年金などを自分で支払う必要があります。

 

また、確定申告も自分で書類を作成する必要があり、事務的な作業が苦痛な方にとってはひと手間になってしまうかもしれません。

常勤には保障されている退職金・有給休暇・各種手当などもつかないケースが多いようです。

求められるスキル

非常勤として求められるスキルはどんなものなのでしょうか。

とくに必要と思われるスキルを2つ挙げてみました。

スキル①コミュニケーションスキル

常に同じ病院に勤務しているわけではないので、常勤医師やスタッフとの情報共有は必須です。
医師としての専門知識はもとより、治療をスムーズに行っていくためのコミュニケーションスキルが必要です。

常勤医師やスタッフとうまく連携を取れるようなコミュニケーションが取れるようになれば、非常勤医師としての大きな役割を果たせるでしょう。

スキル②適応能力

また適応能力も求められる大事なスキルです。

病院ごとにそれぞれの環境や注意点が異なるので、複数の仕事をかけもちする場合などは、その病院に合った柔軟性に富んだ対応が必要になります。

非常勤勤務の5つのメリット

常勤と比較して、非常勤勤務を選ぶメリットは大きく5つあります。

非常勤勤務の5つのメリット

  1. 収入アップが期待できる
  2. 自由な働き方が選べる
  3. スキルアップができる
  4. 専門以外の領域に挑戦できる
  5. 経営ノウハウを学べる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

メリット①収入アップが期待できる

医師の非常勤の時給単価は平均して約10,000円と言われています。

栃木県や群馬県など北関東は、医師不足などの理由で時給がやや高く、約10,000円~15,000円です。

実は、常勤の収入を時給換算した場合と比較すると、非常勤の方が高くなる傾向があります。

 

さらに、専門性の高い分野で高いスキルを発揮できる「定期非常勤」や、より緊急な事態に迅速な対応が求められる「スポット」なら、高額な給与を提示される場合も少なくないようです。

 

そのため、副業やスキルアップとして非常勤で兼業される医師もいます。

空いた時間をうまく利用して収入をアップができるのも非常勤の大きな魅力と言えるでしょう。

メリット②自由な働き方が選べる

近年増えているのは、小さいお子さんを持つ女性医師が、週2~3日など複数日勤務を希望するケースです。

 

お子さんが低年齢のうちは感染症などの病気にかかりやすく、常勤で勤務するのは現実的に難しい状況もあるでしょう。

その点、非常勤なら無理のないペースで仕事復帰できるので、働く女性医師の選択肢の一つとなっています。

 

また、常勤医師は週に32時間以上の勤務が求められ、診療科や勤務する医療機関によっては交代で夜勤や待機などがあり、思うように休みを取れない場合もあります。

「定期非常勤」なら、勤務日や勤務時間を自分の都合で自由に選ぶことが可能です。

 

勤務する日程も毎週・隔週・月1回などから選べ、時間も日勤・当直・半日勤務など、さまざまな選択肢から自分の希望する曜日・時間帯を選んで勤務できるのも大きなメリットです。

 

「スポット」は「定期非常勤」以上に自由度が高い働き方です。

「急な休みができた時に働きたい」「自分の都合のいい時だけ働きたい」など、プライベートを重視した、仕事に縛られない働き方ができるのも非常勤の魅力となっています。

 

また、最近ではオンライン診療の非常勤も人気となっています。

対面での診療より給与水準は低めですが、移動時間がなく、自宅で勤務できるので子育て中の医師にとっては働きやすいと評判です。

 

子どもが小さいうちは育児中心で無理なく働きたい、自由に休みが取れてプライベートも充実させたい、そのような方は「非常勤」の働き方も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

メリット③スキルアップができる

非常勤先でさまざまな症例をこなしていき、スキルアップしたいと考える医師の方も多いようです。

常勤先ではなかなか自分に症例が回ってこないとお悩みの先生は、非常勤勤務でキャリアを積むのも一つの選択肢です。

 

非常勤でも専門医を取得するためや自身のスキルアップのために、積極的に経験を積み重ねている医師も多くいます。

その中でも最も多いのは内視鏡での症例で、次に整形外科の手術なども非常勤で経験を積める症例が多いです。

 

常勤先とは異なる専門外来に非常勤として勤務する医師もいます。

いつもの常勤先とは違う年代の患者さんを担当する、新たな治療法を経験できるのも意識を高くお持ちの医師の方々にはいい刺激になるようです。

 

また、クリニックにおいて非常勤として勤務する場合、クリニックの院長が休みの日に代わりの医師として勤務を依頼される場合が多く見られます。

いくら非常勤でも、その日はクリニックの代表の代わりとして働くので、不安がないようクリニックでの治療方針や治療法などをきめ細かく指導してもらえる場合もあるでしょう。

 

このように、常勤先以外で他のクリニックの院長やスタッフと医療情報を共有できるのは医師としてのスキルを磨くためにも、貴重な経験となります。

また、多くの患者さんの対応をする中で、コミュニケーション能力も知らず知らずに磨かれていきます。

メリット④専門以外の領域に挑戦できる

常勤の診療科以外にも、将来のために新たな領域にチャレンジしたいとのお考えの医師もいるでしょう。

今の病院の常勤として診療科を変更するのは少しハードルが高く、その上一度転科してしまうと元に戻るのはなかなか難しいかもしれません。

 

「他の診療科は何をやっているのか」「自分に合うのだろうか」とお悩みなら、一度「非常勤」としてその診療科に従事してみるのもよいのではないでしょうか。

 

意外かもしれませんが、非常勤の求人には未経験でも応募可能なものもあります。

例えば、睡眠時無呼吸症候群や男性型脱毛症の外来治療などは、医療施設によっては経験がなくても応募ができる場合もあります。

 

在宅診療なども、非常勤として未経験でも働きやすい職務と言えるでしょう。

メリット⑤経営ノウハウを学べる

将来開業を検討している医師が、経験を積むためにクリニックで非常勤として勤務をされるケースも少なくありません。

さまざまなクリニックで経験を積み、クリニックごとの特色・スタッフの管理・経営のノウハウなどを学べ、ご自身が開業をした時のイメージを捉えやすくなる利点があります。

非常勤勤務のデメリット

非常勤勤務には社会保険や福利厚生がありません。

常勤医師として雇用保険や健康保険等に加入する場合には会社負担分がありますが、非常勤では全て自己負担となり、扶養家族の保険も個人加入となります。

 

また、非常勤勤務のみの方は、確定申告にまつわる書類作成等の事務手続きを自分でしなければなりません。

事務作業が苦手な方にはデメリットとなるでしょう。

 

加えて、非常勤先の託児所等の福利厚生の利用が限られているなど、利用できないケースもあります。

有給休暇なども勤務先次第で取れないケースもあるようです。

自由度の高い働き方ができる「非常勤勤務」

いかがでしたでしょうか。

非常勤は、さまざまなご家庭の事情にも対応でき、プライベートを重視される方にとっても自由度の高い魅力ある働き方です。

また、常勤先ではできない専門以外の領域を経験でき、経営のノウハウまで学べるので、開業をお考えの医師の方にとっても貴重な経験となるでしょう。

 

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