開業医向けコラム:経営理念策定のヒント

はじめに

勤務医として順調なキャリアを築いてきた皆様、クリニック開業という新たなステージへの挑戦、誠におめでとうございます。しかし、成功する開業には計画的な準備が不可欠です。

特に重要なのは、医院の“顔”とも言える経営理念を明確にすることです。経営理念がなければ、診療方針が曖昧になり、スタッフや患者との信頼関係が希薄になる可能性があります。また、競合との差別化が難しくなり、地域での存在感も低下してしまいます。

この記事では、開業医として必要な経営理念の策定ステップ、具体的な分析手法(PEST分析、SWOT分析、3C分析)、ターゲット患者の設定方法、そして理念を活かした成功戦略まで詳しく解説します。

 

1. なぜ経営理念が必要なのか?

経営理念は、クリニック経営の基盤であり、以下の3つの理由から必要不可欠です。

 

羅針盤としての役割

経営理念は、日々の診療や経営判断の指針となり、迷ったときに立ち返る原点となります。特に、経営資源が限られるクリニック開業初期には、的確な意思決定を支える重要なツールです。

 

スタッフのモチベーション向上

共有された理念は、スタッフの意識を統一し、信頼感や一体感を醸成します。例えば、「患者様に寄り添う診療を提供する」という明確な理念があれば、スタッフもその方向性に沿った行動を取りやすくなります。

 

患者との共感を生む

明確な理念は、患者に“このクリニックで診てもらいたい”と思わせる魅力を与えます。理念がしっかりと伝わることで、見込み客への訴求力が高まり、体現された診療は口コミやリピーターの獲得にもつながります。

 

Q. 経営理念を策定しないと何が困るのですか?

理念がないと診療方針が曖昧になり、スタッフや患者からの信頼を得にくくなる可能性があります。また、競合との差別化が難しくなり、地域での存在感が薄れることがあります。

 

2. 経営理念策定のステップ

クリニック開業を成功させるために、以下の6つのステップで経営理念を策定しましょう。

 

自身の医療に対する想いを明確にする

まずは、自分自身の原体験を振り返りましょう。どのような経験がきっかけで医師を志したのか、そしてなぜ独立してクリニックを開業する決意をしたのかを明らかにすることが、理念策定の第一歩です。

サマリー

  • なぜ医師になったのか?
  • どのような患者さんを助けたいのか?
  • 理想の医療とは何か?

原体験に基づいた理念は、患者やスタッフに強く共感される力を持ちます。

 

ターゲット患者像を明確にする

ターゲット患者を設定することで、診療方針を具体化し、患者のニーズに合った診療コンセプトを構築できます。特定の層に焦点を絞ることで、より効果的な経営が可能になります。

  • 年代や性別(例:働く世代の女性、高齢者)
  • 診療科目や疾患、(例:生活習慣病、得意とする疾患、手術)
  • 地域連携のあり方(例:かかりつけ医としての役割)

Q「ターゲット患者を絞ると、他の患者は来なくなるのでは?」

絞り込みは差別化の第一歩であり、結果として幅広い患者層にも信頼されやすくなります。

 

フレームワークを活用した分析

ターゲット患者像が明確になれば、その患者層のニーズに応える診療方針を具体化する必要があります。ここで活用するのが、PEST分析やSWOT分析、3C分析です。

 

フレームワークの具体的な活用方法

PEST分析(外部環境の把握)

外部環境を政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の視点から分析する手法です。

  • 政治(Political)

地域医療政策や診療報酬制度など、医療に影響を与える政策の変化を把握します。これにより、法的リスクや支援策を明確にできます。

  • 経済(Economic)

患者層の所得レベルや経済状況を分析し、診療科目や価格設定に反映させます。

  • 社会(Social)

地域住民の年齢層、生活習慣、健康ニーズを把握することで、診療内容やサービスの方向性を決定します。

  • 技術(Technological)

最新の医療機器やIT技術、遠隔医療の導入可能性を検討し、競争力を強化します。

 

【例】

  • 地域の所得層が高いことから、保険診療だけでなく自由診療(美容皮膚科・健康管理プログラム)を提供し、収益性を高める。
  • 行政の健康診断補助を活用し、地域住民に向けた生活習慣病予防の健診パッケージを提供する。
  • 地域の高齢化が進行しているため、デイケアと連携。通院しやすいバリアフリー対応の施設を設計する。

詳しいPEST分析についてはこちら

 

 

SWOT分析(内外環境の整理)

クリニックや自身の強み、弱み、機会、脅威を明確にする手法です。

  • 強み(Strengths):専門性や経験、地域医療ネットワーク
  • 弱み(Weaknesses):人材不足や資金力の限界
  • 機会(Opportunities):地域住民のニーズや新たな医療分野への参入可能性
  • 脅威(Threats):競合医院の存在や社会的な変化によるリスク

 

【例】

  • 競合医院が増加する中、当院は『丁寧な診察と予防医療』を打ち出し、差別化を図る。
  • 経営経験の不足を補うため、開業支援会社やコンサルタントのサポートを活用し、集患戦略を強化する。
  • 地域の高齢者増加と専門医不足を踏まえ、訪問診療と定期健診を組み合わせ、地域密着型のクリニックを目指す

詳しいSWOT分析についてはこちら

 

 

3C分析(顧客、競合、自社の分析)

顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)を分析し、差別化戦略を明確化する手法です。

  • 顧客(Customer)

地域住民がどのような診療科目やサービスを求めているのか、具体的なニーズを特定します。

  • 競合(Competitor)

近隣の競合医院の特徴を分析し、自院との差別化ポイントを明確化します。

  • 自社(Company)

自院が提供する価値を明らかにし、顧客と競合を考慮した上での戦略を策定します。

 

【例】

  • 近隣の若いファミリー層が多いため、小児科と家族向け健康診断を中心とした診療コンセプトを打ち出す。
  • 競合医院の弱みとして『待ち時間の長さ』があるため、当院は予約制を徹底し、効率的な診療フローを提供する。
  • これまでの大学病院での豊富な経験をアピールし、高度な専門知識を活かした診療で信頼性を高める。

詳しい3C分析についてはこちら

 

フレームワークを組み合わせる

これらのフレームワークを組み合わせることで、以下のことが可能になります。

  1. 外部環境(PEST分析)と内部リソース(SWOT分析)を統合し、戦略の方向性を明確化
  2. 顧客と競合の視点(3C分析)を取り入れ、実行可能な具体策を設計
  3. 短期的な課題解決だけでなく、長期的な目標設定にも対応

【例】

  • 地域包括ケアの推進政策(PEST:Political)と、競合医院の訪問診療未対応(SWOT:機会)を組み合わせて、自院では訪問診療と生活習慣病管理を強化した地域密着型クリニックを構築する。
  • 高齢者が多い地域(PEST:Social)では、整形外科とリハビリ外来を設置し、通院が困難な患者には訪問診療を提供することで、競合との差別化(SWOT:強み)を図る。」

 

上記フレームワークは一例です。その他にも5Fや4P分析などがあります。
これらのフレームワークをもとに、成功しているクリニックを分析してみたり、諸先輩の意見、開業支援やコンサルタントに聞いて、をまとめてみましょう。

 

未来像を描く

フレームワーク分析を通じて、自院の強みや弱み、地域のニーズや競合の状況が明確になりました。この結果を踏まえ、次に行うべきは「具体的な未来像」の設計です。現状を正確に把握した上で、5年後、10年後にクリニックがどのような役割を果たし、地域に貢献するのかを描き出しましょう。

サマリー

  • どのような医療を提供したいのか?
  • 地域社会でどのような役割を果たしたいのか?
  • どのような医院になりたいのか?

具体的な未来像を描くことで、現状の課題と目標を明確にし、実現に向けた行動計画を立てることができます。例えば、「地域の生活習慣病の改善に貢献する医院」を目指す場合、予防医療や健康管理のプログラムを展開する計画を立てることができます。

 

経営理念を言葉にする

描いた未来像を実現するためには、その基盤となる理念を言語化することが重要です。未来像が「目指す姿」であるのに対し、理念はその姿を支える「信念」や「価値観」を明確にするものです。

 

経営理念・コンセプト例

「地域の人々の健康を守り、笑顔あふれる生活の実現に貢献します」
「忙しいあなたの健康管理をサポートし、生活の質を向上させます。」
「家族全員の健康を守り、安心できる医療環境を提供します。」

そして、具体的にどのような方針で行うか 3-4つ程度行動指針を記します。

 

行動指針例

  • 最新の医療技術や知識を取り入れるだけでなく、スタッフへの定期的な研修を実施し、診療の質を向上します
  • すべての患者様に「親身で丁寧な診療」を提供します
  • 忙しい患者様の負担を軽減するため、オンライン予約システムと待合時間のモニタリングシステムを導入
  • 患者様一人ひとりに寄り添い、信頼される診療を行います

 

組織全体で共有する

理念はスタッフと共有し、行動に落とし込むことが重要です。

また、ホームページの掲載や取材など外部の媒体も掲載されますので、しっかりと共有を行います。

  • 共有方法:ビジョンボード、説明会
  • 実践方法:定期的な振り返りミーティング

 

3. 経営理念を活かした成功戦略

経営理念が言葉として明確になったら、それを「日々の診療や経営」に反映させていくことが重要です。理念を活かした行動が伴って初めて、患者やスタッフ、地域社会に共感されるクリニック経営が実現します。次に、理念を具体的な成功戦略としてどのように体現するかを見ていきましょう。

 

患者との共感を深める

  • 問診票に生活背景や趣味に関する質問を取り入れることで、患者のライフスタイルに合わせたアドバイスを提供。

地域との連携を強化する

  • 近隣小学校との連携で健康教育を実施し、地域の健康意識向上に貢献。

スタッフの育成とモチベーション向上

  • 働きやすい職場環境の整備
  • キャリアアップ支援の提供

効果的なマーケティング戦略

  • ターゲット層への適切な情報発信
  • SNSやホームページを活用したデジタルマーケティング

4.まとめ

経営理念・コンセプト策定は、開業準備の最初のステップであり、医院の成功を左右する重要な要素です。自分自身の医療に対する想いを明確にし、分析と計画を繰り返すことで、魅力的な医院を築くことができるでしょう。

 

ポイント

  • 経営理念・コンセプトは、一度決めたら固定のものではありません。
  • 院の状況や社会の変化に合わせて、柔軟に見直し、改善していくことが大切です。
  • 上記はあくまで一般的なステップであり、医院の規模や診療科、地域によって、内容は異なります。

 

経営理念・コンセプトの策定はクリニック経営の基盤ですが、すべてを一人で行うのは難しいものです。そんな時こそ、専門家や開業支援のパートナーを頼ることが効果的です。プラザ薬局では、開業準備や運営に関するサポートを通じて、地域に根差したクリニック作りをお手伝いしています。

 

5. クリニックの開院・運営についてサポート

理念の策定や実現には専門的なサポートが欠かせません。プラザ薬局では、経営理念の具体化や地域連携の構築、集患対策など、理念を形にするための包括的なサポートを提供しています。

  • どうやっていいかわからない
  • ほかの準備で忙しい
  • これまでの成功事例を知りたい
  • ホームページや、チラシなどどうしたらいいかわからない

このような課題があればお任せください。

 

これまでの医療ビル・医療モールでの誘致や開業実績を活かしパートナー選定などを全面的にサポートします。

医療機関との連携に強みを持つ調剤薬局だからこそ、開業準備から集患までの包括的な支援を提供します。地域に愛されるクリニックの開業を、共に支えます。

 

当社の医療モールの組成について

当社の強みは、競合医院・診療圏など地域の状況といったマーケット分析を徹底的に行い、そしてこれまでのノウハウから集患が見込める場所を絞り、最適なクリニックを誘致しています。

開業検討中のドクター様が安心して開業できるように工夫をするだけでなく、患者様がクリニックモール内で安心してくつろげることを念頭に設計しています。まずはご相談ください。

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