医院に開業制限?外来医師多数区域とは何か解説します。

新しく医院を開業する場合、来院患者数が見込めるよう人口の多い地域を開業場所に考えるケースは多いでしょう。
しかし、そのような地域は既に外来医師の多くいる地域(外来医師多数区域)であることが少なくありません。
外来医師多数区域で新規開業する場合は、提供を考えていなかった診療機能を求められる可能性もあります。
本記事では、外来医師多数区域の概要と、事実上の開業制限ともいえる「外来医師多数区域における新規開業」についてまとめました。

外来医師多数区域とは外来医師偏在指標にもとづいて算出される

外来医師多数区域とは、読んで字のごとく「外来を担う医師が多い区域」のことです。二次医療圏単位で定められる外来医師偏在指標にもとづいて決められます。
医療圏は、医療法によって定められた病床整備のための単位です。医療について考える際には、この医療圏ごとに調査や検討をします。
まずは、医療圏について確認しておきましょう。

医療圏には3種類ある

医療圏には、次の3種類があります。

1. 一次医療圏

基本的に市町村単位で設定されるのが一次医療圏です。
日常生活に密着した外来診療を提供する、いわゆる「かかりつけ医」という位置づけの医療の整備が目指されます。

2. 二次医療圏

二次医療圏は、隣接する複数の市町村をまとめて1単位として設定されます。
二次医療圏の整備目標は、外来診療だけでなく、入院治療や疾病予防、救急医療などの一般的な医療が完結することです。
また、二次医療圏ごとに保健所を設置することが定められています。

3. 三次医療圏

三次医療圏は原則として都道府県単位です。
感染症病棟、精神病棟、結核病棟などの専門的医療や、高度医療、最先端医療などを提供します。

外来医師多数区域は外来医師偏在指標の上位1/3

先ほども「外来医師多数区域とは外来医師偏在指標にもとづいて決められる」と説明しましたが、この外来医師偏在指標は、厚労省によって算出されたものです。
外来医師偏在指標は、地域性や住民の年齢・性別などのパラメータを加味して算出される指標で、この値が高いほど、その地域において外来医師が多いということを示します。
外来医師偏在指標を高い順に並べたとき、上位33.3%に該当する二次医療圏が、外来医師多数区域に指定されます。

外来医師多数区域での新規開業時に求められる医療機能

今回、厚労省が発表した「外来医療にかかる医療提供体制の確保に関するガイドライン」[注1]では、外来医師多数区域において新規開業の届け出をする際には、その地域において不足している(必要とされる)外来医療機能を担うことを求めるとしています。
[注1]厚生労働省:外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン[pdf]
https://www.mhlw.go.jp/content/000550063.pdf

不足している外来医療機能

もちろん、不足している(必要とされる)外来医療機能は、地域によって異なることが予想されます。
ただし、とくに次のような医療はどの地域でも不足しがちです。外来医師多数区域で新規開業する際には、これらの医療機能提供が求められるでしょう。

夜間・休日の初期救急

救急車で運ばれるような中度~重度の救急患者ではなく、徒歩や自家用車などで来院できるような軽度の救急患者を夜間や休日に受け入れる体制が求められます。

在宅医療

外来医療だけでなく、在宅医療にも柔軟に対応することが求められます。

公衆衛生

企業の産業医や学校医を担当する、予防接種に対応するといった公衆衛生にかかる医療提供体制が求められます。

外来医師多数区域における新規開業制限

先に述べたように、外来医師多数区域で新規開業する場合には、その地域で不足している外来医療機能を担うことが求められます。
その求めに合意しないとさまざまな不都合が発生することになるため、「制限」ととらえられるのです。

1. 都道府県と協議をしなければならない

外来医師多数区域で新規開業をする場合は、既存の医療機関の医療体制などを踏まえたうえで、不足している外来医療機能を担うことが求められます。
都道府県と関係者との間で協議し、合意に至らなければなりません。
また、合意に至ったあとも、どのような事業展開をするのかについても、都道府県や関係者と具体的に議論する必要があります。

2. 合意しなかった場合は公表されることもある

もし合意しなかった場合、あるいは合意しても方針に沿わない医療体制を構築した場合は、医療計画の見直し時に都道府県医療審議会に報告され、意見聴取されます。
また、合意しなかった医療機関として都道府県によって公表されるため、注意が必要です。

外来医師多数区域の新規開業制限は地域の医療格差を是正するための措置

来院患者数を見込める地域は、外来医師多数区域であることが多いです。
外来医師多数区域で開業する際は、夜間・休日の初期救急や在宅医療、公衆衛生など、その地域で必要とされている医療機能を担わなければならず、自由に診療内容を決めることができません。事実上、開業の制限といえるでしょう。
ただし、これは医療充実度の地域格差、病床を診る医師や救急・産科を中心とした医師不足などの問題を解消するために取られている措置です。
外来医師多数区域での新規開業は、提供する診療内容や担うべき機能を見直すきっかけになるでしょう。